競争原理と人事の相対評価の是非を問う議論に関するメモ

"競争原理" と "相対評価" のシステムは、私たちがモノゴコロついたときには、少なくとも、小学校に入学した時点では、すでに世界を支配するルールでした。

このシステムは人類文明の発展に大きく貢献してきたと考える人がいる一方で、疑問や不満を抱えている人も多くいるようです。(わたしもそのうちの一人)

しかし、疑問はあっても、どこに問題があるのか? どうやったらそれを解決できるのか? 他のよりよいシステムはないのか? となると、なかなか取っ掛かりがつかめない難しい問題。

このメモは、この問題に関する議論や考えを進める中で見つけた気づきや観点、事実などを集めたものです。 新しい気付きがあれば加筆修正していきたいと思います。

給料を無条件に均等分配したら競争原理は働かないのか?

子供は遊びの中で勝手に競争を作ってメキメキ成長します。でも、子供の遊びには人事評価もないし給料もありません。

給与と競争原理は切り離すことができる可能性があります。

全員強制参加の競争原理は、集団全体のパフォーマンスを上げているか?

競争によってパフォーマンスが上がるのは、勝ちたいから、勝てると思ってるから、勝ったからです。ならば、負けた人、勝ち目がないと思う人のパフォーマンスは下がるはず。

競争では、勝つ人が現れれば同数の負ける人が必ず現れるので、全体でみたときパフォーマンスは相殺されてしまうのでは?

全員強制参加が前提の競争原理はパフォーマンスに貢献していない可能性があります。

目標とノルマは同じ意味か? 分離できるのではないか?

Wikipedia によると、ノルマは、次のように説明があります。

半強制的に与えられた労働の基準量であり、大抵の場合時間的強制も付加される。

〜中略〜

労働者にノルマを達成させる意欲を高めさせるために、労働者に対しノルマ達成のインセンティブ(報奨金、昇進、昇給、海外旅行など高額商品の授与)を用意し、未達成の場合はペナルティ(解雇、減給、左遷、暴力・暴言など)を与える場合もある。

多くの企業の人事評価で取り入れられている相対評価の制度では、目標設定は上司との間で成果を約束するという意味が含まれており、未達の場合は減給や降格等のペナルティがあります(たとえ未達の者に明示的なペナルティはなく達成者にインセンティブがあるのみだとしても、相対的に報酬は減っているはずなのでペナルティとみなすことができる)。これはノルマの説明に合致するように見えます。

一方、純粋な "目標" の効果を示す事例として、 スキポール空港のトイレに貼られた蝿のシール があります。この例では、目標(目印)を置くことで、オペレーションの精度を上げる効果が確認できます。しかし、目標を外した者にペナルティを課すわけではないので、ノルマ的な側面は含まれません。

目標とノルマは、切り離すことができる可能性があります。

相対評価制度の運用にかかるコストに妥当性はあるか?

人事評価は半年に1度、あるいは四半期に1度くらい、上司と部下との面談が設けられ、目標管理と評価、評価結果のフィードバック等が行われます。

このために、全従業員が時間を割くことになり、とりわけ評価者(=一般的に特に高給なメンバーです)に係る負担は高くなりがちだと思います。

このコストはどれほどのインパクトがあるのか? コストを掛けた結果としてどのような効果が期待できるのか?

人事評価活動にかかる費用対効果が問われる機会は、なぜかほとんどないように思います。

自分が高い評価を得るためのプレゼンは、仲間を蹴落とすためのプレゼンになっていないか?

相対評価のシステムでは、高評価の者が出現したぶんだけ、低評価の者が必ず現れます。 誰かが高い評価を得たなら、同じ序列配列内でソートされる他の誰かの評価が必ず下がることになります。

多くの場合、この配列は特に立場の近い同じ部門の仲間たちで構成されていることでしょう。

つまり、共に協力して貢献してきたはずのチームの仲間同士で、評価の奪い合いをさせられていることになると思います。 それは、個々人やチーム全体のパフォーマンスを最大化するでしょうか?


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コヤナギ トモヤ

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