Internet Explorer 7 ようやくリリース

かつてスタイルシートによる、構造とデザインの分離に関するメリットとデメリットについての記事を記載したが、あれからもう2年半もすぎ、状況がだいぶ変わった。ブラウザの実装もかなり標準化され、世の中に広く認知されているほとんどのブラウザで、無駄なテーブルを排除した、スタイルシートでコントロールされたデザインのサイトを、ほとんどストレスなく表示できるようになってきた。

しかし、やはりいまだに重大な障壁となる要素がある。Internet Explorer だ。
私が、2年半前に「スタイルシートは時期尚早」と書いたときから、Internet Explorerはほとんどまったく進化していない。にも関わらず、インターネット上で8割以上のユーザが、まだIE6を使っているのだ。

10月18日、Internet Explorer 7が正式にリリースされた。現在のところ、まだ英語版のみのようだが、2~3週間程度で日本語版も対応されるようだ。

新しい Internet Explorer 7 はどこが変わったのか

ニュースサイトなどによると、

  • タブブラウザ化
  • ツールバーに検索窓
  • RSSリーダー機能搭載
  • 固定幅でデザインされたウェブサイトをウィンドウサイズにフィットさせる
  • セキュリティ面の強化

などを、新機能として紹介している。どれも二番煎じな感じが否めないが、それはまぁよいとしよう。

レンダリングエンジンを刷新したとする記事も見られるが、どの程度変わったのか。
プレビューリリースのどれか(バージョンは覚えてないが...)をインストールして試してみたことがあるが、エンジンの実装にほとんど違いは感じなかった。上記の「固定幅でデザインされたウェブサイトをウィンドウサイズにフィットさせる」機能などが実現しているところを見ると、作り変えたのでは?という気はするのだが。
もっとも、現在のインターネット上のウェブサイトのほとんどが、IE6に最適化して作られているから「普通に見れて当たり前」なのが原因で、気づかなかっただけかも知れないけど。
たいしていじくりまわしたわけではないが、ぱっと見て気づいた変更点は、

  • プルダウンメニューの上にレイヤーを重ねると、プルダウンが手前に表示されてしまう不具合が修正されていた。
  • スタイルシートのプロパティが、新たにいくつか対応されていたような気がする。
  • 半透明PNG画像を表示できるようになった。

くらいな感じ。半透明PNG画像を表示できるようになったのはかなりうれしいが、セキュリティ面での改善が主な任務だったのではないだろうか。
いじってみてガッカリしたのは、「ピクセルでサイズ指定されたテキストの文字サイズを変更できない」仕様が、そのまま生きていたこと。この仕様になっているブラウザは、もうIEだけだ。これのために、IE向けに別のスタイルシートを用意する面倒は、どうやら省けそうにない。

Internet Explorer のエンジン変更にかかる影響範囲は予測不能

なぜ、エンジンの仕様がほとんど変わらないのか。その原因は、IEコンポーネントにある気がする。憶測だが。

IEコンポーネントは、Windowsに組み込まれたIEのブラウザエンジンを、他のアプリケーションから利用できるというもの。これによって、インターネットから情報を取得したかったり、ウェブサイトを表示したかったりするアプリケーションは、自分で開発しなくても簡単に利用できる。そもそも、インターフェイスそのものをHTMLで開発しているアプリケーションもある。
有名なところでは、SleipnirLunascapeなどのブラウザは、レンダリングエンジンにIEコンポーネントを利用している。企業などがプロモーションのために開発するような、ちょっと見た目のオシャレなアプリケーションなども、実装が手軽でデザインの変更も比較的ラクにできるので、アプリケーションのインターフェイスにIEコンポーネントを使っていることがある。などなど、Windowsマシンでは、意外と気づかずにIEを使っていることが多いのだ。

ではいま、IEのレンダリングエンジンが革新的に進化したらどうなるだろうか。
ここで挙げたような、IEコンポーネントを利用しているすべてのアプリケーションが、その影響を受けることになる。場合によってはインターフェイスが上手く表示されなかったりするかもしれない。まったく動作しなくなる可能性だって、なくはない。これはかなりリスキーなことだ。

10年ほど前のブラウザ戦争の時に、MicrosoftはIEをWindowsに組み込むことで、莫大なシェアを獲得し、Netscapeを突き放した。しかし、「IEをWindowsに組み込んだ」ことが、上記の問題の根本的な原因となっている。IEコンポーネントは、1つのWindowsOSに対し、1つしかインストールできない。つまり、バージョンの異なるIEコンポーネントは、共存できないのだ。
もしそうでないならば、影響範囲をこれほどまでに気にする必要はない。
これまでに開発されたアプリケーションは、旧バージョンのIEコンポーネントを使い続ければ、動作しなくなることはないからだ。IE7を使いたい新しいアプリケーションは、それ専用にIE7コンポーネントを同梱すればよいし、古いアプリケーションも、開発者のペースでIE7に対応することができる。これなら、IE7の仕様がガラッと変わったとしても、そんなに迷惑な話にはならない。

追いつくのか、すたれるのか、どっちかにして

Internet Explorer VS Netscape の終焉後、Netscape4.78というブラウザに対応させるために、ウェブ制作者は胃を痛めてきた。「世の中のすべてがIEになってしまえばいい」と思っていた。だけど今、表示の調整で苦労するのは、たいていIE対応だ。「IEがこのスタイルに対応していたら、仕事がすごーく楽になるのに」と、思うことがしばしばある。このままでは、「世の中のすべてのPCからIEがなくなってしまえばいいのに」と思われるブラウザになってしまいかねない。(やや大げさか)

IEのために別なコードを書くのは面倒だ。IEエンジンが、進化した他のブラウザに追いつくことは大歓迎だ。でも、そうでないならば、いっそ廃れてほしい。

本来、われわれウェブサイトの作り手もいけないのだろう。IEユーザが多いからといって、IEに最適化されたサイトを、余計な工数をかけて、がんばって作る。するとエンドユーザは、もちろんIEに不満を持たない。だから当然、ブラウザを乗り換える必要性を感じない。だから、作り手は、IEではなく、W3Cに最適化されたウェブサイトを作るべきなのだ。「これを表示できないなら、それはブラウザがいけないのだ!」といいはるべきなのだ。そうすれば、IEだけじゃなく、すべてのブラウザが、より標準仕様に近づく努力を強めるだろう。
・・・と、書いてはみるが、実際はできませんけど。

昨今、IEのセキュリティホールが騒がれて、それが原因でFirefoxやOperaに乗り換えるユーザが増え、IEは若干シェアを失った。しかし、もっと根本的なところで、自分の使っているブラウザを検討しみてはいかがだろうか。IE、使いにくいじゃん。
「使いにくい」とか、「動作が重い」とか。それは「危険である」と同じくらい、重要なこと、考え直すべきことだと思う。「弘法筆を選ばず」と申しますが、弘法大師だって立派な筆を使ったほうが、より素晴らしい文字をお書きになるでしょ。と思います。

いかがでしょう。ちなみに書き加えますと。Firefoxもいいですが、私はOperaブラウザ(日本語サイト)ユーザです。信者です。これ素晴らしいですよ。グッドデザイン賞もらってるし。「世の中のすべてがOperaになってしまえばいい」と思うことが、しばしばあります。

( 2006.10.25 )

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ときにはデザイナ、ときにはディレクタ、ときにはプログラマ、ときには何でも屋と、ウェブの世界で未熟ながらもいろいろやっている、コヤナギトモヤです。

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