公開日: 2010年09月11日(Sat)
足りてないのは、ジャーナリズムなんだと思う。
国政についてはいい。不十分なのは、地方政治を地元の有権者に伝えるジャーナリズムだ。
地域の政治は生活に密着している。本来は、国政と同じくらい(あるいはそれ以上に)、それぞれ自分が住んでる地域の政治について知る必要がある。ところが、多くの有権者の日常の中で、地方政治の情報に触れられる機会は少ない。入ってくるニュースの大半が国政の情報ばかりだ。
東京や大阪や宮崎など、一部地域の情報は伝わってくることもあるが、(それはそれでいいんだけど・・・)それを知っても仕方ない。有権者それぞれが、自分の住む地域の情報を得られる必要がある。
我々は日常的にどのように政治の情報を得ているだろうか。概ね、新聞、テレビ、インターネットの何れかだろう。
新聞は地方紙などを読んでいれば地方政治について書かれているかも知れない。(見てないから多分だけど)
しかしそれでも、そもそも読者の新聞離れが危ぶまれる昨今、地方政治についてかなり高い意識がないと、わざわざ地方紙は読まないんじゃないか。
テレビにも地方局があるので、地方局のニュース番組などを観れば地方政治についてわかるかも知れない。
しかし、国政の方が全国放送できるから制作費もかけやすく、要するにおもしろい。ゴールデンタイムに地政治ネタは持ってこられない。
しかも、ケーブルテレビなどでは政治より楽しそうなチャンネルが山ほどあるし、DVDなんかも気軽に借りられるようになったし、そもそもテレビ放送を観る時間すら足りないほど、現代人は忙しい。
結局、地方政治に関心がないと、テレビから地方政治ネタは得られないことになる。
では、インターネットはどうだろう。ツイッターなどソーシャルメディアの普及で、情報の流通コストがさらにどんどん安くなる。インターネットこそ、地方のジャーナリズムに打って付けだと思うが、現状はなかなかよい情報源が見当たらない。
Yahoo!みんなの政治でも、国政についてしか取り扱いがないみたいだ。
地方紙のウェブサイトを見ても、地域の政治に関する情報は希薄だ。社会欄的なネタはそこそこあるが、経済ネタは少なく、政治ネタはほとんどなく、それ以外の殆どが全国紙ネタ、という印象だった。
社説を書いてるとこでも、どこも小沢vs菅の国政ネタで、地域の政治には触れてないという印象(たまたまそういうタイミングだったのかも知れないけど)。地域色はあまり感じられない。
有権者は地方政治についてあまり高い関心を持っていない。だから、もっと関心を持ってもらわないといけない。だのに、関心が高くないと、地方政治にはリーチできない状況なのだ。
地方政治の情報が薄くなるのは、ジャーナリズムがマスメディアを中心に展開されるからではないか。マスメディアでは、狭い地域向けの情報を丁寧に配信するにはコストがかかりすぎる。
例えばテレビ。情報の転送が速くなったおかげで、全国同時放送は今は普通だ。全国で同じ番組を放送できるなら、多少高めでも制作費をかけて作ったコンテンツを一斉放送する方が投資効率がいい。すると、全国に同じ情報を配信することになるので、全国の誰にでも通じる報道が好まれる。つまり地方政治より国政ということになる。
テレビ以外でも事情は同じはずだ。新聞もそうだし、インターネットでも、例えばYahoo!のトップニュースなどは同じ性質を持っている。
こういう、言わば中央集権的なプラットフォームに乗ったジャーナリズムでは、地方の情報を報じるには無駄が大きすぎる。必要なのは、自分が住んでいる地域の情報。全国の全自治体の情報をちくいち知っても仕方ない。中央集権的なマスの構造では、地域に根ざした丁寧な報道は難しい。
それ故、全国共通の大雑把な文脈で政治全体が語られることになり、地方政治はなかなか注目されない。注目されないから報じられない。の、悪循環だ。
インターネット以前と比べて、今は全国の非常にたくさんの人の様々な声が、ナマのまま直接聞こえるようになった。そういう、日本全土からの1億3千万の声を中央で直接受けて、上手く調整しようって言ったって、それはさすがに無理がある。
個人の要求を直接国政に訴えるより、間にワンクッション挟んで、地方自治レベルである程度まとめてからの方が、大きな議論もまとまりやすくなるんじゃないか。
という具合に、地方政治への関心が高くなったら、国政との付き合い方も今とは少し様子が変わるはずだ。
地方分権を謳っても、なかなか実現しない要因の1つがここにあるんじゃないだろうか。
まず有権者が地方政治に関心を持つ必要があるが、そのためには、地方のジャーナリズムを地方の有権者に届けられる準備が先になくてはならない。
僕の場合、生活スタイルが少し特殊かもしれない。朝は普通より遅めだし、夜の帰宅はほぼ終電、情報源のほぼ全部をネットに依存している。しかしそれだとしても、自分の住む地域の地方議員や知事や市長などの選挙になったときに、投票に必要な知識がほぼゼロの状態で投票会場へ臨むような状況が、正常であってはならない。
地域の有権者はニッチなターゲットだ。ニッチなターゲットには、制作配信コストが安いネット、とりわけソーシャルメディアは適しているはず。
がんばれソーシャルメディア。
がんばれインターネット。
公開日: 2010年09月11日(Sat)