公開日: 2011年05月12日(Thu)
Twitterで、こんなツイートをみた。
AppleのiOS4.3がオープンソースになった・・・ だと!?!? > > http://opensource.apple.com/release/ios-43/
AppleがiOSをオープンソース化するらしい、とのこと。
公式な声明は見つけられなかったので、本当かどうか確認できてないが、もし本当だったなら・・・。
これが何を意味しているか自分なりに考えてみた。
すごいことだと思う。時代の移り変わりを強く感じた。
・・・と、想像を膨らませてやたら興奮してみたが、実際に公開されているパッケージの一覧を見るに、単純にベースにしたオープンソースのライセンス上の問題でオープンにせざるを得ないから公開しているだけなんじゃないかと思って、がっかりしている。
どうやら早とちりだったかもしれないけど、せっかく想像膨らんだのでまとめてみた。
フィクションだと思ってお楽しみくださいw
iPhoneにせよiPadにせよ、製品としての完成度は競合するどんな製品よりも高い。少なくても現時点では、このことに異論がある人はそうはいまい。
これほどの完成度を実現し得たのは、ハードウェア、ソフトウェア、サービス、プロモーション、製造、流通に至るまでが総合的にデザインされてきたということに尽きよう。それはスティーブ・ジョブズ氏の人並外れたプロデュース能力あっての神業であって、そう簡単に真似できることではないし、Appleは当然、製品力に自信を持っているはずだ。
Android陣営に世界シェアを抜かれたという状況らしいが、それも数多あるAndroid搭載機の合計に、Apple 1社がようやく抜かれたという話なので、iPhoneに代表されるApple製品の製品力は健在と言えるだろう。
そんなiPhoneの重要なパーツのひとつであるiOSをオープンソース化する目的とは何か?
iOS搭載端末のユーザはiOSのアプリが、Android搭載端末のユーザはAndroidのアプリがそれぞれ必要になる。当然ながら。
製品としてのiPhoneの普及率が依然トップだとしても、iOSのシェアはAndroidに抜かれ2位となった。これはつまり、AppStoreのシェアが2位になったことを意味する。
AppStoreのシェアを回復するためには、どうすれば良いか? 最も簡単なアイデアを出してみる。iPhone以外にも、Apple製品以外にも、iOSを搭載したらどうだろう。
つまり、オープンソース化。
おそらく、プロダクトとしてのiPhoneが持つ競争力より、iTunes Music Store や AppStore のシェアを重要視した結果の判断だったのではないだろうか。
日本のdocomo成功の背景には、ケータイの付加サービスの充実がある。iモードや、キャリア課金の仕組み、キャリア公式サイト、お財布ケータイなどがそれで、長くキャリアのシェア争いの争点になってきた節がある。
このiモードの戦略は「うちのケータイだったら、こんなにたくさんの便利なサービスが使えるから、うちのケータイ買ってね」というものだ。端末を中心にサービスを配置していく考え方で、ゆえに、それらの付加サービスは閉じているほど強かった。
iOSのオープンソース化は、それが、逆転しつつあることを象徴している。
サービスを中心にプロダクトがデザインされるようになりつつあるのだ。
より便利にTwitterが使えるように、より便利にFacebookを使えるように、より便利にウェブやメールが使えるようにする事が、プロダクトデザインの差別化ポイントになりつつある。この価値観の世界では、サービスはオープンな方がいいし、端末はオープンなサービスに対応している方がいい。
Twitterがどんなデバイスからでも利用できるのは、TwitterAPIの仕様が世界共通だから。AppStoreが、どんなiOSデバイスからでも利用できるのは、AppStoreのAPIが世界中のiOSに共通だから。
このような、みんなに共通の約束事が、端末とサービスをつなぐ唯一の根拠となる。
端末メーカーにとっては、既にある著名なサービスを、いかに他社製品よりも便利に利用できるようデザインできるかが重要な争点となるならば、逆にサービスの提供者にとっては、次のような事が重要になる。
自分はウェブ屋なので、最後にウェブの話を。
ワールド・ワイド・ウェブ(WWW)は、端末メーカーにとって、それ自体が1個の巨大な情報サービスだ。WWWの閲覧もできないような情報端末では、それだけで致命的なハンデを負うといっても過言ではない。だから端末メーカーは、自社の端末でそのサービスを利用できるようにするための、クライアントアプリ"ウェブブラウザ"を搭載しようとする。
では、どんなブラウザを必要とするだろうか。世界中の数多のウェブサイトを正しく利用できるためには、ブラウザメーカーとウェブメーカーの間に一定の約束がいる。ブラウザメーカーもウェブメーカーも複数存在する"N:N"の関係の中で、その全員に共通の約束が必要だ。
つまり標準化。そして、我々には既にウェブ標準がある。
端末やブラウザにとっては、ウェブ標準を正しく、より快適に処理できることが、WWWを最大利用するための最短距離である。
ウェブにとっては、ウェブ標準を正しく理解し、その約束に則って実装することが、デバイスを問わず広くウェブユーザに効率よくサービスを提供するための最短距離である。
ウェブ標準が重要なのは、このためだ。
公開日: 2011年05月12日(Thu)