公開日: 2008年01月27日(Sun)
ペーパーレス社会とのハザマの続き。今回は対策のために、1つアイデアを考えてみた。
注目したのは、オフィスでよくやる「Eメールの印刷」。
長いメールや企画書などの電子文書を受け取ったとき、画面で見るのは苦痛だ。デジタル文書は検索性や視認性も高そうに思えるが、他の文書と対比しながら読んだり、3ページ目と23ページ目を並べて見づらいなど、以外と難しい場面は多い。何より、椅子に座って前傾でPCモニターに向かう姿勢が疲れて仕方ない。
結果として、それを印刷して、赤ペンを手に、休憩室や喫煙室や喫茶店に行く。そこまで行かなくても、デスクで見るにも、印刷したほうが見やすい。そして、その10枚や20枚といった大量の印刷紙は、読んだらもう不要だ。シュレッダーにかけられて、破棄されてしまう。
紙には、まだこういう使い方がある。このような行動をしているのは、おそらく私だけではないと思う。
企業では、印刷にかかる紙やトナーのコストが嵩んで頭を抱えているだろう。無駄な印刷をせず、なるべく "2 in 1" や "4 in 1"(2ページ分、4ページ分を1枚に印刷する設定) で、モノクロにするように、全社向けのメールで呼びかけたりする。このようなメールを受け取ったことがある人は、かなり多いのではないだろうか。
そこで、今回表題の「ハンディペーパーレスプリンタ」という案。MacBook Air ばりに薄いA4サイズの液晶モニタ端末である。
前回の話でもチラっと触れているが、「何でもできるツールには、紙の代わりは勤まらない」と考えている。
すでに多くを求めすぎな感があるPCの機能と一緒くたにする事を目指せば、ぐちゃぐちゃになって使いにくく、非直感的なものになるだろう。
つまり、パソコンでは紙の代わりにはなれないということだ。
ハンディペーパーレスプリンタ案では、単純に「擬似プリンタである」というスタンスを取り、一時的に印刷したい長文メールや作りかけの企画書などの、「読んだらすぐ捨てられる日常的印刷物」を削減するためだけに使うものとして想定している。
この製品に同梱される内容は次の通り。
まず最初にすることは、付属のプリンタドライバCD-ROMから専用のプリンタドライバをPCにインストールする。次に、USBドックをPCに接続し、その上に本体をセット。そして、PCから長文メールを印刷するだけだ。
PC側からすれば、新しいプリンタが1つ追加されたようにしか見えていない。ところが受け取った側(ハンディペーパーレスプリンタ)は、印刷紙を出力しない。その代わりに、本体の中にその印刷データをストックするのだ。
あとは、ハンディペーパーレスプリンタをUSBドックから外して、休憩室へでも喫煙室へでも持って行けばいい。そして、タバコをふかしてコーヒーをすすりながら読んだ後は、潔く削除するだけだ。
本体に仕舞い込まれているスタイラスを使って、メモを書き込むこともできる。メモを書き込んだデータは、USBドックからPCへ戻してもいいが、飽くまで紙の使用感を追求するならば、それを見ながらマスターデータを修正して、そしてメモごと潔く削除してもいい。
ちなみに、プリンタとしてPCからデータを受け取るので、Microsoft Word でも Excel でも、あるいは PDF や HTML の印刷でも、すべて何らかの同一の汎用形式に変換されていると考えられる。そのため、メモを書き記した状態でPCへ戻したとしても、マスターデータをそのまま置き換えることはできない。(できない方がいい)
飽くまで1人に1台。個人的な無駄な印刷を省くためのエコ製品となるだろうが、もしも社内のみんながこれを持っていたら、個人的なエコではなくなるかも知れない。
次の例は、会議室で印刷して配るような、配布資料を削減する構成案。
この絵には、新しいアイテム「ペーパレスプリンタハブ(別売)」が登場する。
プレゼンターは、配布資料のデジタルデータを自身のノートPCに入れて会議室に持ち込み、プリンタハブをUSBで接続する。この会議室には、プリンタハブから10本のケーブルが各席に伸びており、ハブに対してプリントキューを送信すると、10本のケーブルの先全てに対して印刷データが送信されるという仕組みだ。
ゲストはハンディペーパーレスプリンタをそれぞれ持参(あるいは、10人席の会議室に10台据え付けてもいいかも知れない)しており、それぞれが着席すると、席の前にはUSBミニA端子があって、プレゼンターが配布資料を印刷すると、ゲスト10人のハンディペーパーレスプリンタに転送されるというわけだ。
会議の配布資料も、殆どの場合、永久保存の必要のない一時的印刷物であり、これらも、会議が終わればシュレッダーへ転送される運命にある。ハンディペーパーレスプリンタ上で完結できるならば、大幅な印刷コストの削減につながるだろう。
読んだらすぐ削除する想定なので、さほど大量のメモリを積んでいる必要はないし、電池も3~4時間持てば十分ではなかろうか。タッチスクリーンが必要だが、これもかなり安くなってきている。
知識がないので想像の範囲を出ないが、2万円前後で実現できるとうれしい。
製品ランクがあってもいい。白黒ディスプレイだと、1万2000円、とか。iPod touch のようなマルチタッチインターフェイスで、紙をパラパラとめくる感じや、削除するために、紙をビリビリに破くジェスチャーを再現したりとか、WIRED VISIONの記事で見かけた 巻物式ディスプレーの『Readius』は売れるか にあるような、折曲がるディスプレイを採用して、折りたたんでポケットに入れて持ち運べるとか、高額製品には、より紙らしい特典がたくさん盛り込まれたりする。
紙らしい取り扱いに近づけば近づくほど、ユーザはきっとシビレてくれるだろう。
その他、USBドックと接続するためのインターフェイスとして、差し込む必要なく、ドックに置くだけで繋がる専用端子か、赤外線、あるいはBluetoothのような機能が必要となる。会議室で使ったりするため、USBミニA端子が直接ささるようにもなっているべきか。
その他、紙の代替という用途を守るために、ぜひとも付けて欲しくない機能として、無線/有線LAN、ワンセグチューナー、携帯網通信モジュール、その他インターネットと接続できるあらゆる機能を挙げておきたい。これらのような機能があると、機密文書のセキュリティが脅かされる危険性があるばかりか、動画を再生したいとか、ウェブサーフィンしたいとか、悪しき欲望がふつふつと沸いてきてしまうからである。その役割は iPod touch にお任せするとして、ここでは「紙を減らす」というミッションに、ユーザも集中するべきである。
近頃は世界的な環境問題を取り上げたテレビ番組やニュースをよく目にするようになり、環境に対する配慮を心がけたい気持ちはいっぱいではあるものの、それでもやはり産業革命以降の技術の進歩がもたらした文明の利器を手放すことは難しい。今回問題にした、一時的印刷物についても、やめようとしてはみても、やはり長文メールとPCモニタ越しににらめっこするのは苦痛で仕方ないのだ。
このハンディペーパーレスプリンタのような製品を使うことで、もしも多少なりとも我らが地球の寿命を延ばせるのであれば、ぜひとも、そうさせて頂きたい。
公開日: 2008年01月27日(Sun)