著作権とデジタルコピーの行く末を考える

2008/2/15に放送されたワールドビジネスサテライトの録画を見た。角川のYouTube戦略の話題が取り上げられていた。

YouTubeやWinnyを通じた著作物の違法コピーに悩まされている一方で、角川のアニメは、プロモーション活動をしていないアメリカでの売り上げが伸びていて、国内の売り上げに迫らんばかり、とのこと。なぜかといえば、「YouTubeを通じてアニメを知ったから、としか考えられない」と、取材の中で言っていた。

エヴァンゲリヲンのガイナックスでは、売り上げの3~5%ほどを支払えば、ファンは自主的に制作した綾波レイのフィギュアを自由に販売してもいいことにしているらしい。(これのことかしら?ちょっと雰囲気が違う気がするけど)

音楽の世界では、Radioheadのアルバムがオンラインで販売されたそうだが、価格は消費者が自分で決めて支払うという試みをして、大成功を収めたと聞いている。iTunes Music Store でも、コピーガードがかかっていない普通のMP3が一部販売されている。これもちゃんと売れているそうだ。

韓国では、テレビ番組は放送が終わると、テレビ局のウェブサイトで視聴できるので、デジタルHDレコーダーなどは必要ない、といった話も聞いたことがある。(ほんとかウソかわからないが)

オープンソースなどソフトウェアにも通じるところがありそうだ。カンパウェアとか、寄付とかがこれに当たるのではなかろうか。ちょっと前まで、Wikipediaの記事の上部に、寄付を求めるような告知が表示されていた。

音楽にせよ、映画にせよ、ソフトウェアにせよ、新しい高度なコピーガード技術にコストをかけ、著作権を守ろうとするが、ユーザは著作物を購入するコストをかけずに、コピーガードを破る工数をかける。するとまた、それを上回るコピーガードを開発する。このイタチごっこは永遠に終わらないだろう。それどころか、昔私が買った誰かのアルバム(U2だった気がするが定かでない)は、コピーガードが掛かっていてMP3にできず、当時電車の中でiPodでしか音楽を聴かなくなっていた私は、そのアルバムを満足に楽しむことができなかった。ちゃんと買ったのに。

こうして、一般消費者の音楽や映画などの文化に触れる機会を狭めてしまうことが、逆に文化の発展を妨げる原因になるのではと危惧する声もある。もしも、100年前に現在のようなコピーガード技術や過剰な著作権保護が一般常識化していたら、ジャズなんて生まれなかったかも知れないし、クラブやDJもいなかっただろう。前にプロシューマについて触れたが、過剰なコピーガードはこうした活動も制限してしまう。

著作権とデジタルコピーの関係が変わろうとしているのではないか。

やっぱり限界があるのだ。あり方を変えなければいけない。

Radiohead や iTunes Music Store のMP3の成功が、もしかしたら答えなのではないかと思う。「Radiohead が好きで好きで仕方ない」、「Radiohead がいなくなったらワタシ死んじゃうワ」という、依存度が高いユーザは多くの対価を支払う。そうでない人は、その人の依存度に見合った分だけ支払う。対価を支払わなければ Radiohead はいなくなる、という当然のことを理解していれば、これは自然な行動に見える。そして、極めてフェアだ。

私にもこれと似た経験がある。EmEditorというテキストエディタを愛用しているのだが、これが1ライセンス4,200円という価格がついている。しかし、私が購入したバージョン4から現在の7まで、当時のライセンスがそのまま使えてしまう。このソフトに大変依存度が高い私は、逆に心配になる。開発元が儲かってくれなければ、つぶれてしまい、ソフトウェアのアップデートもされなくなってしまう。それでは困るからだ。そういう感覚が、著作物を買う消費者にも必要なのだと思う。

そこでちょびっと心配になる。こうした考え方は、日本でもちゃんと定着できるだろうか。

欧米にはチップという文化があって、「サービスには対価を支払うものだ」ということがしっかり定着しているが、日本では馴染みがない。ストリートミュージシャンが広げているギターケースや裏返した帽子にコインを入れて去る人も、日本ではなかなか見ない。イカしたジャズメンの演奏を30分も聴き入って、さんざん盛り上がって、そしてそのまま帰る。Radiohead のようなスタイルがモデル化するためには、消費者側も改造しなければならない。つまり、「値札がなくても、物やサービスの価値を評価できる能力」が、消費者側に求められるということだ。できるかな?

もしも、Radiohead の例のようなスタイルが一般化したら。それがインターネットを通じて世界標準になるとしたら。チップを知らない日本人や、著作権を知らない中国人は、果たしてついていけるだろうか。と、コピーガードのない新時代に期待する半面、ちょっと心配してもいるのです。


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コヤナギ トモヤ

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