幸せのサスティナビリティ

いまだにニッポンの教養の話を引きずっているのだが、この放送の中で、「30年前の科学技術には、輝ける未来を描いた空想があった。今の科学技術には空想がない」という発言がある。いまこそ、空想すべきときだと。情報技術者の端くれの末席にいて、これにはすごく共感できた。

世の中がどうなっていたら素晴らしい未来なのか、自分はどうしたいのか、いつかこの世を去るときに、自分がどうなっていたいのか。私はそれに対する具体的な答えを持っていない。そして、それを想像できないままで、日々何かしらを開発し続けている。多分、多くの人が、私と同じように、具体的な答えを出せないでいるのではないだろうか。

「空想する」という作業は、この答えを具体的にイメージすることなのかもしれない。

少し前に、ロハスという言葉が注目を集めた。LOHAS = Lifestyles of Health and Sustainability。「Sustainability」は、「持続可能性」と邦訳される。物事を持続させるという発想は、自己相似的組織論で言うところの、女性的な活動「進化の定着」に当たる。

今、改めて、私個人の主観が望む輝かしい未来像を空想してみるが、これといって画期的に進化した未来を想像できない。現状にある程度満足しているのか、あるいは、このまま進化し続ける科学技術に脅威を感じ、思考を拒んでさえいるのかも知れない。

実感としては、「現状に満足」しているわけではない。地球温暖化問題、化石燃料枯渇、学校裏サイト、給食費を支払わない親・・・、方々で他人事にできない社会的問題は山積している。現代、科学技術の進化は速すぎることが、逆にこれらの原因にもなっているのではないか。

昔、例えば遥か昔の石器時代に、これらの社会的問題は存在していただろうか。当時は別の問題を抱えていたであろうが、現代に起こっている大きな問題のほとんどは存在しなかったと想像する。

「持続可能性」。私たちは、どうしてその状態を持続できなかったのか。急速な科学の進化が、幾つかの問題を解決するかもしれない。しかし、幾つかの問題を解決した技術から、新しい別な問題が発生する危険性は大いにある。それが石器時代と、現代との、問題の変化を生んだ要因の一つではないか。

科学が進化することは大変よろしい。地球環境を救うかもしれないし、いくらかの弱者を救うこともできるようになるだろう。しかし、使う人たちが、正しい使い方を知らなければ、新しい問題の発生に繋がる。今の弱者を救えても、新しい別の弱者を生み出しかねない。新しい幸せを得るために、古い幸せを捨てては、「持続可能」な社会とはなかなか言いがたい。不幸を捨て、幸せを持続させたいじゃないか。

あえて、自分自身が望む、輝ける未来像を空想するならば、それは、画期的に摩訶不思議な新しい技術や、ライフスタイルが登場する華々しい世界ではない。穏やかな時の流れの中で、人々は笑顔に満ち、争いもなく、そして、そうした幸せを、永久に持続可能にする世界。上手く表現できないが、楽園な感じ。

せっかく情報が速くなったんだから、その分ういた時間で好きなことをすればいいじゃないか。昼寝をしてもいい。マンガを読んでもいい。星に名前をつけてもいい。そうすることで、人の心が豊かになるならば、それは輝ける未来ではないかしら。情報技術は、それができる時間を手に入れられる技術だったはずだ。
エアコンでキンキンに冷えた部屋でスーツにネクタイでがっちり暖をとり、ホットコーヒーをすするのはやめにして、窓を開けて水を撒き、ランニングシャツとハーフパンツ姿で、セミの鳴き声を聞きながら汗だくでカキ氷を食べればいいじゃないか。

ロハスが注目されたこともそうだし、エコを謳う製品がシェアを伸ばしているともいうし、世の中全体の声と、今の私の気持ちが近いところにあればうれしい。

人の気持ちは怠けていてはいけない。科学技術がなんでも解決してくれると思っていてはいけない。古き時代の良き習慣を忘れてはいけない。

「持続可能」な素晴らしい世界は、科学技術の進化によってもたらされるものでは決してないと思う。我々人間自身が、もっとオトナにならなければならない。

というわけで、どうしたら幸せな社会の「持続可能性」を実現できるのか。という課題に繋がるわけだが、私はまず、これを、教育とか、継承とか、そういうものに求めることができると考えている。

これについては、長くなりそうなのでまたの機会に。


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コヤナギ トモヤ

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