ウェブ標準をリードするのはウェブメーカーであるべき。ブラウザメーカーじゃなくて。

古いブラウザがだんだん廃れてきて、ウェブ標準に正しく対応したモダンブラウザが普及してくる。

ウェブ制作者は、ウェブ標準に対応したモダンブラウザが普及すると喜ぶ。モダンブラウザに合わせてコンテンツを作れば、沢山のブラウザの(バグも含めた)個性を意識しなくてもよくなり、仕事がすっきり進められるようになるからだ。

ウェブ制作者は、しばしば、モダンブラウザで意図したとおりに表示されたことを、自分のコードがウェブ標準に対応しているという根拠にする。そのうちに、モダンブラウザで意図したとおりに表示されることだけを目指すようになった。しかしそれはウェブ標準の一部でしかない。もったいない。

ウェブ制作者は本来、ウェブブラウザでコードをレンダリングしてみる前に、ウェブ標準の仕様書を熟読し、正しく理解し、その仕様どおりのソースコードを書かなければならない。そして、共通の標準仕様に準拠して作成されたコンテンツを正しく表示するように実装するのがブラウザメーカーの役割だ。

しかし、ウェブサイトはウェブ標準に完全に準拠していなければならないが、ウェブブラウザは実はその一部にのみ対応していればよいのだ。

ご存知の通り、ウェブブラウザの役割が、PCモニタにウェブページを描画することだとは限らない。それは携帯電話端末の画面かも知れないし、テレビ画面かも知れないし、液晶モニタを持たない点字リーダーや音声読み上げのインターフェイスかもしれない。通信が遅い環境のために、画像をダウンロードしないブラウザもある。
あるいは、そのブラウザはウェブページのタイトルと見出し、埋め込まれたメタ情報の一部だけをピックアップして、あとは一律ただの文字列として解釈し、検索用のデータベースにインデックスを登録することが役割である可能性もある。

入力インターフェイスも、マウスとキーボードがあるとは限らない。指で触って操作するタッチスクリーンもあれば、キーボードしかない環境、テンキーしか使えない場合など実に様々に利用される。

ブラウザメーカーは、そのブラウザの目的によって、ウェブ標準を好きなように解釈し、必要な部分だけを利用すればよいのだ。そうやって様々な目的に対応した様々なブラウザが登場すれば、ワールドワイドウェブの利用シーンはさらに豊かに、そして便利になるだろう。そして、ユーザはその様々な選択肢から、自分の目的に合ったものを選択し、そのブラウザを通じてウェブ標準のウェブサイトへアクセスするのだ。

ぼくらウェブメーカーにとって重要なのは、ウェブサイトがウェブ標準仕様に準拠していることが、全ての前提になるということだ。ウェブメーカーがリードしなければならない。ブラウザがそれに対応するのは、本当は後からでいいのだ。

唯一、ウェブ標準仕様に完全に対応しなければならないブラウザがあるとすれば、ウェブサイトをテストするためのブラウザだ。ウェブ制作者がブラウザに完全準拠を求めるのは、そのウェブブラウザをテストツールとして利用しているからであって、ほとんどのウェブ制作者は、標準に対応したウェブブラウザの挙動を通じてのみウェブ標準を理解している。

ぼく自身もその一人なんだけど、ほんとはそれじゃダメなんだ。仕様書読まなきゃ。

ウェブサイトは、FirefoxやSafariで閲覧するためのものではない。仕様書をちゃんと読めばたぶん気づくんだろう。それ以外の様々な場所や場合や目的で利用されている。Firefoxではやらないような使い方も、ウェブ標準はちゃんと想定して設計されている。

ウェブメーカーがそれを意識していないと、ウェブ標準の本当の普及は実現しないだろう。


プロフィール

ときにはデザイナ、ときにはディレクタ、ときにはプログラマ、ときには何でも屋と、ウェブの世界で未熟ながらもいろいろやっている、コヤナギトモヤです。

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