お断りしたいのはタトゥーでも刺青でもない

任天堂のキャラクターを自分の皮膚に刻み込んでいる人がいるらしい。きっと、私には想像もできないほどに、任天堂のキャラを愛して止まないのだろう。日本語やサンスクリットのカッコイイ文字列を、よく理解せずに刻み込んでしまったような人もいる。その間違いが見てすぐにわかる人たちは、それを「恥ずかしい」と評することが多いようだ。しかし、それはそれで微笑ましくも美しいじゃないかと私は思うのだが、どうだろう。漢字で「愛」などの文字を刻んでいるような人は、言葉で Love を囁くだけでは飽き足らず、体を張って愛を叫びたかったのだろうか。イイじゃないですか。

「シール、タトゥーに関わらず、刺青の方の入浴をお断りしております。」温泉や銭湯やプールなんかに行くと、ほとんど必ずこれに類する文言が掲げられている。しかしこの文言は本心を表現していない。本当にお断りしたいのは、「暴力的な人」とか「怖い人」だ。普通のカタギのお客さんにとっては、いきなりお風呂でヤクザ同士の戦争とかを始められてはたまらないし、どうでもいい理由でイキナリ難癖つけられても面白くない。だから、暴力的な人や怖い人には一緒にお風呂に入って欲しくないというわけだ。

だけど、暴力的な人や怖い人を見分けるのは簡単じゃない。実際に怒らせるようなことをやってみるとか、殴られてみるとか、そういう方法しかない。そんなことを入浴客全員にやっていたら大変だし不経済だし、何より殴られれば痛いもんだから、なんとか他の見分け方はないかということで採用されたのが、おそらくヤクザのシンボルとしての刺青だったのだろう。

しかし今日、刺青といえば、虎や龍や、般若や弁天様や桜吹雪であるとは限らない。タトゥーは普通のカタギの世界でも普通にファッションとして成立している。例えばスーパーマリオやクリボーの肖像、あるいは漢字の「愛」だ。刺青お断りのルールは、この愛に満ち溢れた善良な利用者をも拒んでしまうという点で、少々問題がある。とはいえ、「刺青だから怖い人」が成り立たないのと同様に、「愛」の文字が刻まれた人の愛が、必ずしも無闇に信用できるとも限らないのも事実である。

新しい見分け方が必要である。普通の人と迷惑な人とを見分ける方法。「私は迷惑な人物ではない」ということを証明する方法。そこで、過去にも紹介したが、マイクロソフト社が特許を申請したという『脳波図から「ノイズ」を除去して、その人の意図を読み取る技術』を導入してみるのはどうだろうか。温泉やプールの入り口に脳波スキャナを設置して、その人の思考を読み取り、その情報を迷惑思考バリデータに通す。バリデータは、その思考の中に他のお客様の迷惑に結びつくキケンな要素がないかをチェックして、その真偽を返す。もしも迷惑な人であれば、空港の持ち物検査のように、サイレンと警報が鳴って、めでたくお断りとなるシステムである。

もしも、このようなシステムが導入されれば、おそらく画期的な成果をあげるだろう。

私ならきっと、この夢のようなシステムが導入されて暴力の脅威から開放された、安全・安心な温泉施設よりも、タトゥーや刺青が禁止された従来の普通の温泉施設の方を選択するだろうと思う。

間違いない。


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コヤナギ トモヤ

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